「難しい、通常の方法では出来ない」という見極め
先日、「他院で5年ほど装置を続けて治療を続けてもらっているが、いっこうに治らない」という方が、おみえになりました
初診相談で拝見させていただいて、私は、
「お気の毒ですが、このままの方針では治りません。外科的矯正治療(骨を切るという手術を併用する矯正治療)がベストで、どうしても手術が嫌なら歯をもう1本抜歯すれば、なんとかできますが、ゴールの高さがかなり落ちます。」
とお答えしました。
その方は、結局、外科的矯正治療を選択されましたが、治療が進み始めてから、その方が、
「イノウエ矯正歯科に行きつくまでに、いろいろ回って意見を聞いてみた。歯を抜けば治るという先生もいれば、抜かないでも治るという先生もおられた。でも、違うな。と思った。」
とおっしゃるのです。
「矯正治療の特殊性は、ここにある。」と最近つくづく思います。
大切なのは、見極める能力なのです。
私にも、若い頃には「できる」と思って開始して、治療が長期にわたってしまい、申し訳ないと思った患者さんがおられました。
申し訳ない症例を少しでも減らせるよう、私たち専門医は、勉強し経験を積んでいきます。
「難しい」「通常の方法ではできない」を見抜けるのが、日本矯正歯科学会臨床指導医(旧専門医)なのだと思っています。
いつもお話しするように、インフルエンザのように決まった検査キットがあって、、タミフルかイナベルという決まりきったお薬があるのとは異なります。
矯正治療は、本当に奥が深い治療なのです。そして、見た目をよくするだけのものではなく、一生健康で暮らすための大切な歯を守る医療であることをよく認識して、治療をスタートしてほしいと思っています